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東京地方裁判所 昭和38年(ワ)9460号 判決 1964年4月14日

理由

甲第一、二号証(各受取人欄の記載部分を除いて、成立に争がない。)と証人金塚正也の証言によると、「被告山野井の弟の経営する訴外山野井砕石工業株式会社の取引先である訴外株式会社村上舗装(代表者被告内藤)の社員村田某が昭和三八年七月一九日(本件手形振出日付)頃右山野井砕石工業株式会社事務所に、被告内藤振出、受取人として原告会社の記載のある本件手形二通(甲第一、二号証)、を持参し、右山野井砕石工業株式会社の社員であり、かつまた被告山野井の秘書的立場にもあつた知合いの訴外金塚正也に対し「原告に本件手形を持参したところ、信用のある人の裏書を得て来るようにいわれたので、裏書してくれ。」と懇請し、金塚が受取人欄に原告会社名のある手形に裏書したところで無意味であるので、そのむねを答えたが、村田のたつての要求もあつたので、いわれるままに、第一裏書欄に被告山野井の署名をし、なお念のため、その足で、村田と二人で、原告会社に赴き、居合わせた社員に、無意味な裏書でもよいかと念を押したところ、同社員がそれでも構わないむねを答えたこと。ところがその後本件各手形の受取人欄の各原告会社名の記載が何人かの手により、二条の線(インキ)で抹消されその左側に葛生砕石山野井憲司とインキで手書され、受取人欄の上部欄外に削一五字、加九字との記載のあること。」が認められる。

右認定事実によると、本件手形の受取人欄は前記金塚の裏書後において、何人かに変造されたものと認めるのが相当であるから、被告山野井関係においては、変造前の記載に従うべきところこれによると、本件手形は、受取人たる原告と裏書人たる同被告との間において、裏書の連署を欠くことになり、しかも原告において、その間における実質的な手形上の権利の移転について何らの立証もないから、原告の一の手形についての請求は理由がないといわざるを得ない。

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